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笹幸恵
2019.6.16 14:38皇室

血統のみで天皇家を語る非礼

自民党の有志議員5人が
「日本の尊厳と国益を護る会」を
発足させた。

メンバーは、青山繁晴、山田宏の2参院議員、
鬼木誠、高木啓、長尾敬の3衆院議員。

「自民党がやるべきを、やらざるままになっている。
それをどうにかしたい」ということで、
男系の皇位継承、外国資本による土地買収の拡大防止、
スパイ防止法の制定の実現が目標だという。

とくに男系の皇位継承について、青山氏は
「男系」ではなく「父系」と言う。
男とか女とかいうと誤解を招き、とくに
外国人でもわかるように、という主旨らしいが、
言っていることは男系固執主義者とほとんど変わらない。
男系女子まではいいとして、その先、母系になると
王朝が交代して天皇家の終焉につながる、とか、
旧宮家の皇籍復帰も選択肢に入れるべき、とか。

王朝の交代って、非常に観念的だ。
そもそも上皇后陛下はもう正田さんではないし、
皇后陛下も小和田さんではない。
また女性宮家が創設され、眞子さまが当主になり、
小室圭さんと結婚されたら、彼は小室さんではなくなる。
同じように、もし愛子天皇が実現したとして、
そのお婿さんになる人は、佐藤でも鈴木でもない。
男も女も、皇室に入ったら苗字がなくなる。
王朝という観念はそこにはないと思うけど。

だいたい、女系天皇になったら
天皇家が終焉する、という意味もわからない。
「あ、今の天皇は女系だ、ハイ終わり」って
なるということ?
要するに愛子さまが天皇になるのはいいとして、
愛子さまのお子様が女性だった場合、
天皇にはなれない、天皇家は終わり、と
言っているのと同じ。
あるいは天皇として即位したとしても
私は認めませんと言っているに等しい。
どんだけ上から目線なのか。

ついでに言うけど、この方々、
平成の時代、天皇陛下の何を見てきたの?
権力を持っていた時代ならいざ知らず、
いまの時代、多くの国民は天皇の「なさりよう」に
自然と敬愛の念を持っている。
国民に寄り添い、国民のために祈る、
その「なさりよう」を、上皇陛下は
平成という時代を通じて国民に見せてこられた。
だからこそ、その背中を見て育った天皇陛下は
「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し」
皇位を継承されたのだ。
そして多くの国民はそれを有難いことと思っている。
天皇と国民のこの奇跡的な関係は、
もっとも理想的な「権威」のあり方だ。

男とか女という性別あっての敬愛ではない。
たとえ男系を父系と言い換えたとしても、
女だからダメというのでは、
やっぱりそこに男尊女卑の感覚があると
言わざるを得ない。

血統のみで天皇家の存続を語る。
こんな非礼なことはない。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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